グリンダムの王族
クリスはその言葉に何も言わずにセシルに駆け寄ると、彼女の体を背後から抱きしめた。

これもいつものことである。
隙あらば触ってくる。

「行かせない」

クリスが耳元で囁く。

―――いつからこんなにタフになったんだろ。

セシルは不思議な気持ちだった。
何を言っても全くメゲる気配がない。
クリスに”好きだ”と言われた直後はその驚きで多少気を使ったものの、最近ではうんざりして言いたい放題なのに、クリスにはまったくこたえない。

一度恋に落ちると盲目なタイプなのだろう。
かつてリズのために同盟を潰そうとまでした男だ。

それにしたってリズと自分じゃ全く違うのに、どうしてこうなっちゃうのか、、、。

「クリス、、、」

セシルが語りかける。クリスは、「、、、なに?」と聞く。
セシルを離す気はないらしい。

「どこにも逃げないし、誰とも浮気しないから、もうちょっと好きにさせてくれない?」

セシルの言葉にクリスはしばらく黙っていたが、「好きにさせてるじゃん、、、」と呟いた。
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