グリンダムの王族

ゴード王国城では、なかなか慣れないながらも新しい暮らしが始まっていた。

即位したばかりの若い王の部屋に、パタパタと少女が駆けて来る。
国王の部屋の前で止まると、そこに居る見張りの兵士に「お疲れ様です!」と言って頭を下げた。

亜麻色のお下げが揺れる。
その格好からして、侍女のように見える。
少女は兵士の目の前で、部屋の扉を迷い無く開けた。

見張りの兵士は怪訝な顔をして、「待て!」と言って王の部屋に入ろうとした少女を押し留めた。
少女は驚いたように兵士を見ている。

「お前は、王付きの侍女ではないな。
勝手に王の部屋に入ってはならない!」

そう言われた少女は瞬きをしつつ、「でも、、、」と言って困ったように部屋を見ると、「呼ばれてるんです、、、」と訴えた。

兵士が鼻で笑う。
国王が侍女を個人的に呼び出すことなど有り得ない。

「嘘を言うな!
なんのつもりだ?!」

困り果てた少女の目の前で、王の部屋の扉がゆっくりと開いた。
中からゴードの新国王が顔を出す。

兵士は驚いて固まった。

「陛下、、、」

「リズ、遅い」

即座に王が言った。その目は目の前の少女を見ている。
兵士は驚いたように目を丸くして少女を見る。

「すみません、カイン様、、、。
お皿を洗っていたら、いつの間にか、、、」

「そんなことだろうと思った」

そう言いながら少女の格好を見る。
そしてやれやれとため息をついた。

「そんな格好のまま来たら、止められるに決まってるだろ」

どうやら今のやりとりを聞いていたらしい。
兵士は目を見張ったまま、王と少女を交互に見ている。
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