グリンダムの王族
その後、クリスは昨日のようにまた地味な服に着替え、出かける準備を始めた。

リズは今日は仕事のはずだ。それでもどうしても会いたかった。
彼女の曇りのない笑顔を見たかった。

クリスはまた宰相に昨日と同じ嘘をつき、1人でグリンダム城を出て行った。



街に向かい、昨日リズに教えてもらったパン屋に辿り着いた。

窓から中を覗くと、リズの姿が見える。
忙しそうに客の応対をしている。
白い布で頭をつつみ、白い前掛けをつけている。
パンを作りながら時折売り子もやっているようだ。
そんな格好も彼女には似合っていると思えた。

クリスは少し躊躇ったが、馬を停めると思い切って店に入って行った。

リズは突然現れたクリスを見て驚いたように目を丸くした。

「、、、パン、買いに来た」

そう言うと、その顔に温かい微笑みが広がる。

「ありがとう」

その笑顔に、胸が熱くなる。なんだか涙が出そうになった。

パンを選んでリズのもとへ持っていってお金を払う。
クリスはパンを袋に入れてくれる彼女をじっと見つめていた。

「リズ、、、」

クリスはリズに声をかけた。リズが目を上げる。

「仕事終わってから、、、会えないかな」

クリスはそう言った。
突然の申し出にリズは少し戸惑ったような顔を見せた。

「でも、、、。今日は夕方まで仕事だから遅くなっちゃうよ」

クリスはその言葉に、「待ってるから、、、」と呟いた。

彼女を困らせているかもしれない。
そう思いながらも諦めることができない。

リズは少し考えたようだったが、「じゃぁ、、、あの湖で」と言ってくれた。

「、、、ありがとう」

クリスはほっとしたように笑顔になった。
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