グリンダムの王族
リズはいつものようにパン屋で働きながら、時々ぼんやりしていた。
昨日のことを思い出しては、赤くなる。

自分の首にかけられた首飾りに触れるたびに、クリスのことを思い出した。

昨日のキスは、リズにとって初めてのキスだった。
すごく驚いたけど、嫌ではなかった。
胸が苦しくて、たまらなかった。

”、、、両親に言って、分かってくれたら、、、。
また、きみに会いに来てもいい、、、?”

クリスの言葉を思いだしては、胸を高鳴らせる。

今まで男の人とあまり縁がなかったリズには、
この数日で起こったことは大事件だった。



だがその日、リズの身に信じられないことが起こった。

仕事を終えて帰ったリズの家では、両親と向き合うようにして座っている見知らぬ男の姿があった。
金色の髪と髭、りっぱな鎧。彼の後ろには数人の男が従うように立っている。
彼らも鎧に身を包み、その姿は一目で騎士と分かるものだった。

両親が戸惑いを見せながら、男に対して「娘です」と説明した。

男は立ち上がると、リズに向かって頭を下げた。

彼は城の近衛騎士隊長だと名乗った。
自分とは縁遠いと思っていた城の騎士、
しかもその最高位にある人が自分の家に居る。
そんな信じられない状況にただ動転する。

隊長はリズと、彼女の両親に向かって話を切り出した。

「ラルフ王が、ご息女をご自身の後宮へお望みです」

その言葉に、リズも両親もただ凍りついた。
何も言えずに隊長を見る。固まるリズの側で、リズの母親が「な、、、なぜこの子を、、、?」と当然の疑問を口にした。

小さな村で暮らすリズは、王になど会ったこともない。
村でも街でも目立ったことなどしたこともない。
王の目に止まる理由がさっぱり分からなかった。

隊長は、「ご息女は王に見初められました。是非この申し出を受けて頂きたく思います」と、疑問の答えにならない返事をした。

両親もリズも、それ以上何も言えずにただ凍りついたように固まっていた。
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