ー親愛―




先生は 私をソファに腰掛けるよう促し 窓を開けながら




“コーヒー飲む?”と、聞いた




“はい…。”




先生は マグカップをふたつ用意し、インスタントのコーヒーの粉を入れ ポットのお湯を注ぐ




“私の机の上に、薄緑の大きな封筒があるでしょ?…それを見てみて。”




マグカップのコーヒーをスプーンで混ぜながら ワクワクした顔で言う




私は促されるまま 机の上の封筒を取り 中から書類らしき物を取り出した




その書類には この間行った老人ホームの名前が書かれていた




ドスッ




両手にマグカップを持ち 私の座っていたソファの前の席に座る




“香坂さん。ビッグニュースっていうのはね。実は、この間行った老人ホームの方が香坂さんをエラく気に入って下さって、香坂さんさえ良ければ、採用したいって”




はぁ? なんで…いきなり…




“先生…。でも、私まだ面接も何もしてないですよ。”




“そうなのよ。だから、私達も驚いているのよ…。だけど、あなたなら大丈夫よ”




…大丈夫 ?




何を根拠に言っているんだろ…この人は。




“でも先生…”





“大丈夫よ…。あなたなら、私。なんの心配もなく出せるもの”




楽天的な顔が 急にとても穏やかで…まるでマリア様みたいな優しい顔をして言うから




私は おもわず




躊躇してしまう




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