男子、恋をする
この十日余りで何十回と練習し、イメトレにイメトレを重ねたおかげか。
元々記憶力も運動神経も抜群な俺の体には、ダンスのステップは完璧にマスターされている。
そして、
「すごい! 今までのロボットダンスが嘘みたいに様になってた!」
「あぁ。見せ場としては十分だ」
今までで一番そぞろな気持ちでのぞんだダンスを会長と乙部は手放しに褒めちぎった。
何とかなったな~って安堵してる二人を余所に俺の心境は複雑この上ない。
今まで気合いは十分でも、目の前の寿梨にガチガチに緊張してロボットダンスになってしまっていたのに……。
君原妹と那津のおかしな態度に気を取られて踊った途端うまくいくなんて……皮肉すぎる。
「じゃあ休憩挟んで次の場面いきまーす」
乙部の呼びかけで舞台の周りに控えていたエキストラやら裏方やらがぞろぞろと動き出す。
それをぼんやりと立ち尽くしていた舞台の上から見下ろしてた俺に向かって、
「…………」
那津が無言で顎を出口の方にしゃくってみせた。
しかも口パクで保健室保健室って呪いの呪文のように繰り返してるし。