男子、恋をする
「飛鳥は見かけによらず妹バカね」
「っ!!」
すっかり沈黙していた俺達の背後には、いつの間にか保健室から出て来た寿梨と君原妹が居た。
正確には俺の背後であって、恐らく正面に居た会長は気付いてたんだろう。
ポーカーフェイスを貼り付けた妹をやれやれと言った表情で一瞥した(ように見えなくもない)。
だって今さっき言われたばっかりで、幼なじみの寿梨みたく感情を読み取れるワケがない。
さすがの眉目秀麗文武両道の俺にも難解な難易度トリプルS級の超難問だ。
「飛鳥が言ったことは気にしなくていいわ。……大城くんは大城くんで頑張るべきことがあるんだから」
「あっ……」
ソワソワと落ち着かなげに傍らから見つめる寿梨や正面から見据える会長の視線も気にせず、こう言いながら君原妹が俺に差し出してきたモノ。
それは君原妹が仕立て直した青年の衣装と作りかけのクチナシの花だった。
「これ……」
「がんばって頂戴」
いつものポーカーフェイスにいつもの淡々とした口調。
……のはずだったのに。
言って去っていった姿は、この後の練習に一度も現れはしなかった。