男子、恋をする
頼りないしダサいしムカつくけど、腐ってもヒロイン。
せいぜい、俺を引き立ててもらおうじゃん。
腹の中でゴチャゴチャと考えてるのを悟られないように、
「文化祭までよろしく」
十八番の愛想の良い作り笑いで寿梨に挨拶したら、
「あ、うぅ……よ、よろしく……お願いします……」
さっきまでの笑顔がまるで嘘だったみたいに、物凄い速さでこの世の終わり顔になって視線を伏せてしまった。
……あれ、何この感じ。
ダサ子に俺、避けられてる……?
……ダサ子の癖に生意気な。
この寿梨の顔色の急激な変化に、会長と乙部が怪訝そうに俺を見ている。
「は、はは。緊張させちゃったかな」
出来る限り自然な顔で取り繕ってみせたけど……寿梨のあからさまな俺を畏怖する態度。
ウザくてウザくてムカつく……はずなのに。
避けられてる悲しみで、ほんのちょっとだけ人気者の模範生徒の心が折れた。