男子、恋をする
「やー。澪斗にも彼女が出来たなんて、お兄ちゃんやっと肩の荷がおりた気分」
「う、うっせーな! 勝手に入ってくんなよ!」
「教科書にノートに参考書……。相変わらずエロ本の一つも無いなんて、おまえ大丈夫なワケ?」
そう言って兄貴は俺が広げっぱなしにしていた机の上を見渡し、哀れむような視線を投げかけてきた。
「いいんだよ。俺は兄貴みたくはなりたくないの」
キッパリと言い放ちベッドから立ち上がった俺は、ノートにペンを走らせる兄貴を机の前から追い払った。
「何言ってんの。俺に似た美しい顔とバランスのとれた素晴らしい体型を授かりながら未だに童貞として燻ってるなんて……。世の中の女の子たちに申し訳ないとか思わないの?」
「つって、色んな女の子に手を出しまくる尻軽な男にはなりたくないからな。兄貴みたいに」
俺と入れ替わりにベッドのふちに座った兄貴を一瞥し、散らかっていた机を片付けていく。
俺は兄貴のようにはなりたくない。
清斗なんて名前に反して、自分の美貌を武器に女を食いまくる男なんか……。