男子、恋をする

「ホントは怖い癖に~。……素の自分を見られるのが」


「っ!!」



真っ赤になった俺を見て、兄貴はクククと喉を鳴らして笑った。


バカの癖にこんなときばっかり年上ぶってくる。

どんなに勉強して兄貴より賢くなっても、そんなところだけは勝てたためしがない。



図星をさされて逆上した自分の未熟さが物凄い恨めしい……。



「まっ、その寿梨ちゃんって娘には愛想尽かされないように頑張んな」


「……うるせー」


「女の子を悦ばせる手ほどきならいくらでも教えてやるからなー」


「要らん!」



ベッドから立ち上がり、ひょこひょこと軽い足取りで扉の外に出て行く背中を睨み付ける。


もう絶対今日は予習も復習も頭に入んないな……。



「そーだ。一個忠告」


「はっ?」



扉の閉まり際。
身を翻した兄貴が顔だけを隙間から覗かせる。



「愛想笑いの優等生も良いけど、時には本音で伝えるのも大事。これ、人生の先輩からのアドバイス」


にっと笑いながら親指を突き立てた兄貴に、思いっきり枕を投げつけた。



既に閉まった後の扉にぶつかった枕が力無く床に落ちていく。
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