男子、恋をする
ポケットから取り出したキーケースを兄貴に手渡し、入り口の方へとさりげなく背中を押して誘っていく。
これ以上長居されては流石に誤魔化し切れない。
兄貴が再び血迷って寿梨の名前を出さないうちに、とっととお引き取り願おう。
「あれ~清兄もう帰っちゃうのー?」
背後から聞こえる那津の明らかに面白がった声はとりあえず無視。
「…………」
無言で隣をすれ違って行く俺たち兄弟を睨め付ける君原妹も気付かないふり。
とにもかくにも今はこの、尻も口も軽い我が兄を追い出すのが最優先だ。
「なんだよ澪斗ー。そんなに警戒しなくっても、可愛い弟の想い人に手出したりしないってのー」
「っっ!!」
後は扉から追い出すだけ……。
なんてラスボスに最後の一撃を食らわす直前に油断したが為に、ドデカい反撃を受けたような……。
とにかく非常に不味くて、とてもヤバくて、かなり最悪。
すれ違う最中だった君原妹の“ほら、わたしが言わなくてもバレたじゃない。ザマーミロ”と言わんばかりな眼差しが痛くてしゃーない。