ばうんてぃ☆はうんど・vol.3~ほーんてっどほすぴたる《改訂版》
 最後の戦闘のあとストークスのバトラーを調べたら、腰から下を覆うような形でスラックスの下にこいつを身につけてた。人間の関節の動きに合わせて、アクチュエータの力で筋力を補助する機材で、民間が開発したやつだと、筋力の衰えた年寄りの歩行用や、力仕事のサポート用なんかで出回ってたりする。
 だがこいつは軍用だ。身につければ、およそ常人では不可能な動きが可能になる。――それこそ、壁や天井を飛び回るような――
「ま。こんなもんでもなけりゃ、人間にあんな動きができるわけねえよな。おまけに防弾仕様。少なくとも5.56mmまでは想定してる。なんでわかるかって、実際ぶち込んでみたからな。しっかり星条旗マークを入れてる辺りが、隠すつもりがあるんだかねえんだか。笑えるな。おまけに素材が特殊だ」
 アシストスーツをぷらぷらさせながら、鼻で笑う。本来ならサツに渡さなきゃならねえもんなんだが、表ざたにすると国中パニックになりそうだったんで、そのままパクってきた。
「特殊?」
 ディルクの問いに、
「ああ。オペ室に俺たちが閉じ込められたとき、ドアがなにかで補強されてるって言ったろ?」
「銃が効かないと」
「そうだ。で、襲ってきた連中ぶちのめした後に調べに戻ったんだ。ありゃおそらくカーボンナノチューブだぜ」
 カーボンナノチューブってのは炭素の同素体で、フラーレンの一種だ。アルミの半分の軽さ、繊維方向の引っ張り強度はダイヤモンド以上。どうりでライフル弾でも効かなかったわけだ。
 91年に発見されたばかりの新物質。見つけたのはジャパニーズのプロフェッサー。ジャパニーズテクノロジーにバンザイ。
「で、こっちのアシストスーツの外装も、どうも同じ素材っぽいんだ。詳しく調べなきゃ断定はできねえけどよ」
「……そんなもの、そこらで気軽に買えるようなシロモノではないぞ?」
「わあってるさ。んでだ。今朝、そいつを引っぺがそうと工具を持って戻ったら……すでに誰かにはがされた後だった」
「むう……」
「それだけじゃねえ。残ってたはずのカメラから戦闘の痕跡まで、なにもかも綺麗さっぱり消してやがる。最初から何事もなかったみてえに。今回の件、まだなにかウラがありそうだぜ」
 言って、コーラを喉に流し込む。
「つまりストークスの後ろで、マン・ハンティングを指揮していた人物がいたということか。あるいは組織か」
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