不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
「あ、・・そうなんだ。ところで、凄いよね。ベンツだって。私も一回乗ってみたいな。」
私は、微妙に話題を逸らして、ベンツの話題に持っていく。
「・・・アヤの家は、御薗グループだから。」
御薗グループ、私でも聞いたことがある有名な企業グループの名前。
要するに大金持ち。
「・・・へ、へぇ~・・・って、・・・それ、凄すぎだよね。」
「あ、でも、アヤ本人は、全然、お金持ちぶったところなんてまったく無いんだよ。・・・・あの人と違って。」
マイは、最後は小声で、初日にマイを警察官僚の娘だから私達のグループだと言ってきた女の子を横目で見ながら言った。
「いい子なんだね・・・」
「うん。本当にいい子・・・なんだ。」
マイは、アヤのことを笑顔で話すが、やっぱり最後は、どこか悲しげな表情に戻った。
私は、どこに話を持っていけばいいのか迷う。
マイが、アヤのことを話す様子からして、マイがアヤに抱いている気持ちが複雑なものということが見て取れたから。