不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-

「ルミ、私も帰るね。」


今までとは違い、かなりそっけなくミヤビが帰ろうとする。


「え、あ、うん。また明日ね。」


ミヤビの後ろ姿に声をかける私。


ミヤビは、後ろ姿のまま、手だけを上げる。


その帰っているミヤビを今までコウの後ろに立っていた田村ジュンがいきなり追いかけた。


「え、何?」


私は、意味が分からずにコウに聞く。


しかし、コウは何も答えなかった。


遠くで言い争いをしているのが少し聞こえてきたが、内容まではわからない。


そして、ミヤビが、平手で田村ジュンの頬を思いっきり叩いて、走って帰って行った。


しばらく田村ジュンは、ミヤビに叩かれた場所に立っていたが、まるで何事も無かったかのように、もといたコウの後ろに戻ってきた。


しかし、何事もないようにしていても、田村ジュンの頬には、しっかりミヤビの手形が赤く残っていた。

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