不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
「・・・残念だよ、ルミ・・・」
コウは、さらに顔を真っ赤に紅潮させて、静かにその場を離れ、学校へと戻っていった。
「ちょ、ちょっと、コウ!勝手に勘違いしたまま、戻らないでよ!」
私の叫びのむなしく、コウは、学校の中へと消えた。
そんな私の後ろで、ミヤビとマイの押し殺した笑いが響いていた。
「もう!ミヤビ、家の近所で噂になったらどうするのよ!」
私は、ミヤビに向って叫んだ。
「う~ん。それじゃ、実際に付き合っちゃう?」
「えっ?」
ミヤビの言葉に私とマイは、気持ち距離をとる。
「えっ、冗談よ、冗談。」
今さら焦るミヤビ。
さらに、ミヤビから距離をとる私とマイ。
「もう、冗談だって、私は、男が好きなの!」
ミヤビの絶叫が、校庭に響く。
校庭で遊んでいた金網越しの男子生徒や私達と同じように校庭でお弁当を食べていた百合ヶ丘の女生徒が一斉に私達の方を見る。
「・・・マイ、行こっか?」
「うん。」
私とマイは、ミヤビを無視してその場をさっさと離れる。
「ちょっと、ひとりにしないでよ!」
教室に戻る私達の後ろから、ミヤビの叫び声が追いかけてきた。