不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
「・・・美味しいに決まってんだろ!俺が働いているケーキ屋のクリームなんだから。」
「あなたの働いているケーキ屋?」
「ああ。」
私は、男の顔をジックリと観察する。
「・・・あ、あなたが、さくらと美咲が言っていた!」
「誰それ?さくらと美咲?・・・記憶にない名前だな・・・いつ俺とやった女だ?」
「はぁ?別にやってないわよ!」
「ん?だったら、何でそのさくらと美咲は、俺のこと知ってるんだ?」
男の声は、どこまでも深く冷たい。
「たまたま、ケーキ屋で見たって言っていたのよ・・・その・・・カッコイイ人を・・・」
「・・・へぇ~・・・要するに他の女どもと同じように顔だけ気にするクソ野郎ってことか。」
「・・え?」
「ああ、そうだ。それなら、そいつらに伝えといてくれよ・・・今度、俺を見世物扱いしたら、二度と見れない顔にしてやるってよ。」
男の顔に浮かぶ、この上ない非常な表情。
しかし、その目には冷たい中にも、何か惹きつける哀しみが浮かんでいた。
私は、その男の目に引かれ、怖いけど、男から目を離すことが出来なかった。