不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-

私は、信号を見つめる。


しかし、信号は急には変わらない。


信号待ちの私の側にだんだんと足音が近づいてくる。


(神様、お願いします。早く信号を青にしてください。)


そして、足音が、私のすぐ後ろで止まる。


「ねぇ、もしかして・・・・」


後ろの男が私に何か話しかけてきた瞬間、信号が青へと変わる。


私は、その瞬間を見逃さずに、話しかけてきた男に気づかないふりをして、すぐに歩き出した。


その速度は、いつもの2倍。


あっという間に、不良を引き離す。


そしてそのまま、駅の改札を抜け、ちょうど来ていた電車へと駆け込んだ。


そこで初めて一息つく。
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