不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
私とマイが、学校の門をくぐる直前に、1台の黒塗りのベンツが、門の前に横付けされる。
そして、私達の目の前で運転手がベンツの後部座席のドアを開け、ひとりの女の子が降りてきた。
長い茶色っぽい髪が、朝日を浴びて光輝いている。
「・・・うわぁ~・・・」
思わず、声を上げる私。
その私の声に気づいたのか、その女の子は、私を一瞬見たが、すぐに前を向くと、百合ヶ丘の校舎の方へと歩いていった。
「・・・見た、マイ?・・・あそこまで行くと本当にお嬢様だよね。」
私は、感嘆の声を上げ、隣のマイを見る。
「・・・そうだね。」
マイの声は、どこか悲しそうだった。
「どうしたの?」
下を向いたマイに声をかける。
「・・・ううん。・・・なんでもないよ、ルミさん。・・・それよりも、早く教室に行こう!」
顔を上げたマイは、もう、いつものマイだった。
「・・・う、うん。そうだね。」
私は、少し疑問に思ったけど、何か聞いてはいけない雰囲気を感じたので、聞かなかった。
そして、教室に着いた時には、私は、もう、そのことを忘れていた。