拝啓 隣にいない君へ(短編)
 京哉にお礼を言って別れてから、当然僕は一人になった。だけどもう、孤独に押し潰されている場合じゃない。僕には、やらなければいけないことができたのだから。



「……いつかまた、何処かで会えたら……」



 その時、君とやり直すことが許されるのなら。僕の気持ちをまっすぐ伝えよう。そしてもう二度と、君を傷付けないと誓おう。

 君が側に居ないと、やっぱりダメなんだ。明日という日は毎日当たり前のようにやってくるけど、その中の一部だった君の方が、僕にとって当たり前になっていたんだと気付かされた。

 謝って許されることじゃないのかもしれない。君の心の空に、僕は何度も雨を降らせてしまったことだろう。だけど、もしも君がまた、隣に居てくれるというのなら。僕はもう一度、君と笑い合いたい。



「……家に行ってみるより、街中で偶然会えた方がドラマチックだよな。とりあえず、公園でも行ってみるか。」



 そこは、初めて君に会った場所。蝉の声も微かになったから、世間ではそろそろ旅行雑誌の紅葉特集が組まれる頃だろう。柄にもない台詞を口走りながら、僕はゆっくりと歩き出した。
< 7 / 10 >

この作品をシェア

pagetop