想うのはあなたひとり―彼岸花―


心から呼べる友達なんていなかった。
一番早いときで2ヶ月だったかな、新しい学校を変わったのは。

それすら俺は文句を言わない。一生懸命働く母親の背中を見て言いたい言葉をいつも我慢していたのを覚えている。



そして中学二年生になった秋ごろ。
俺はまた新しい学校へ転校してきた。
郊外より少し離れた学校だ。
かといって田舎ではない。

紺色の学生服を着て、挨拶をする。



「初めまして。これで転校10回目になる美波皐です。いついなくなるか分からない俺ですが、よろしくお願いします」




もうこの挨拶にも慣れた。
ただ回数を変えるだけだし。


二年生のクラスは3クラスあるそうだ。
俺はその中の2年B組となった。

英字のクラスなんて珍しいな、と案内されるときに思ったっけ。



俺はこの学校で出逢ったんだ。アイツと。


俺の大好きだった人。




池内奈月と…。



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