想うのはあなたひとり―彼岸花―
休み時間の終わる5分前。
響き渡ったのは皐のポケットから聞こえる携帯電話の音だった。
洋楽歌詞のアップテンポの曲調は皐の性格を表しているよう。皐にはスローテンポの曲よりアップテンポの方が似合ってる。
これだけ大音量に流れているのに本人は全く気付かない。
痺れを切らした弘樹が皐の肩を掴み揺さぶった。
爆睡してしまうくらいバイトが大変なのかな?
「おい、皐。携帯鳴ってる」
「…ん…ぇ…なに?」
目を擦りながら辺りを見渡し、鳴り響く携帯をポケットから出す皐。
「…は?誰だよ」
携帯を見つめ小さく溢した皐は鳴り響く音楽を止めた。
耳に携帯を耳に当てる。
私たちは黙って皐をじっと見ていた。
「誰お前。つか何で番号知ってるわけ?もしかして見た?」
その表情は怒りと怖さで溢れていた。