想うのはあなたひとり―彼岸花―



空想の世界に椿がいるのなら私は幸せなんだ。




駅に着き、保科さんに電話をする。





「…もしもし保科さん?」





『着いたかな?もう駅の駐車場にいるよ。階段下りてすぐのとこ』




「わかりました。行きますね」




改札口に片道切符を入れて外に出る。
この匂い…久しぶり。
なんだかドキドキしてきた。

階段を下りると保科さんの言った通り、保科さんが運転するグレーの車が停まっていた。
窓から確認し、助手席を開ける。




「あ、久しぶり。元気だった?今日も可愛い格好してるね」




「元気でした!早く椿に会いたかったです」




「そっか。じゃあ行こっか。」


車の中に広がるFMラジオ。
丁度今、流行りの曲が流れている。
視聴者が涙する失恋バラード。


私は耳を塞ぎたくなる。
今から会いに行くのに、この歌を聴いてしまったら嫌な感じがするから。




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