想うのはあなたひとり―彼岸花―


でも私の横で保科さんは「この歌いいよね」なんて言っていた。
私は「流行りの曲知らないから…」とだけ言ってその場を過ごした。



内容まで深く聴かずに私は海を見る。
やっぱり空が曇っていると海も汚く見えてしまう。


神様、早く拭いてよ。
絵の具の汚れ。
そうしてくれないと世界が汚くなっていくよ。




「ねぇ妃菜子ちゃん?一つ聞きたいんだけどさぁ…」




「…はい?」




この時感じた。
運転する保科さんの表情がいつもと違うと。





「…美波皐…くんだっけ?その子とは仲いいの?」




「えっ…」




「仲良くしてもいいんだ。妃菜子ちゃんの友達だと思うし…。でも…椿くんには言わないでくれないかな?皐くんのこと」




どうして、保科さんがこの時こう言ったのかなんて分かるわけもなかった。
でも今思えば、あの時言われた意味が分かった気がする。
でも私は馬鹿だったから、未来のことなんて何も考えていなかった。



神様の悪戯計画が発令されたのは、この数時間後だった。
思い出したくもない過去が蘇ってきたんだ…。





お願いです。





皐…私を一人にしないで。








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