想うのはあなたひとり―彼岸花―
~2.銀色ナイフと赤色液体~


「知ってる?明日台風くるみたいだよ」



うん、知ってる。
椿が教えてくれたから。
確か、17号だったよね。
季節外れの台風、嫌になっちゃう。



「俺の左は妃菜子専用だから」


照れちゃうよ、やめてよ。
恥ずかしいことをそうやって簡単に言うんだもん。




「彼岸花の花言葉知ってる?」


教えてくれたよね。
素敵だなって思ったよ。
お母さんにあげたかったけど、彼岸花…死んじゃったの。



ねぇ、椿。
お願いだから置いていかないで。



私を一人にしないで。




苦しいよ、息ができない。




「あんたが消えなさい!!」




母親が生きる私に言った言葉。


もがく、もがく、もがく。




「助けて!!」




目を開けるとそこには暗闇が広がっていた。
どうやらこの世界に朝がきたようだ。
あのあと泣きつかれて寝てしまったのだ。



良かった、生きていて。




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