想うのはあなたひとり―彼岸花―


もしかしたら死んでいたかもしれない。
寂しいと死んでしまうウサギのように。
でもあの話は嘘だと聞いたことがある。
だけど私の場合、寂しくて本当に死んでしまうんじゃないかって思うときがあるんだ。

部屋の時計を見ると、6時を過ぎていた。
体を起こし、カーテンの隙間から空を見る。
どんよりした空は昨日から引き続き。
やはり台風は来そうだ。
今日は学校に行かなくちゃ。
椿に心配かけちゃうし。

向かった場所はお風呂場。
昨日入るの忘れてしまったから。
母親に気づかれないように物音を立てずに向かう。
電気はつけない。
蓄積された傷を見たくないから。

シャワーで洗い流す。
昨日までの記憶を。

リセットしよう。
今日から、強くなろう。


お風呂に入ったらあとは準備だけ。
重くなった体を引きずり、出口へと進む。
学校に行くのはいつぶりだろうか。
この傷を見られたくなくて行かなかった。
で椿と同じ高校に通いたいから行かなくちゃ。
何としてでも卒業しなきゃ。


「行ってきます」


久しぶりに言った。
唇が震えた。


一歩踏み出す。


コツ、コツ。
闇が私の背後へやってきた。



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