想うのはあなたひとり―彼岸花―


リュウと向き合って話すのは初めてかもしれない。
前の私は逃げたくて、ずっと足元を見ていたから。




「ねぇ、何であなたは玲奈の奴隷なの?」




「…妃菜子ちゃんは慌てん坊だね。そんなに焦らないでよ」




笑ってコカ・コーラゼロを飲むリュウ。
するとリュウは「やっぱりミルクにすればよかった」と一言呟いた。
ミルクにしていたって結局「コカ・コーラにすればよかった」って言うに決まってる。


オレンジジュースを口に含み、喉を潤す。



そして私はリュウが食べ終わるのをじっと待っていた。
きっと食べ終わったら話してくれるはず。



オニオンリングを右手に、ハンバーガーを左手に。
私が慌てん坊ならあなたは食いしん坊よ。





「…妃菜子ちゃんは玲奈のこと知ってるんだよね?」





「まぁね。中学が一緒だったから…」





「玲奈ってさ、嫌われてたでしょ?」





< 314 / 385 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop