想うのはあなたひとり―彼岸花―
リュウと向き合って話すのは初めてかもしれない。
前の私は逃げたくて、ずっと足元を見ていたから。
「ねぇ、何であなたは玲奈の奴隷なの?」
「…妃菜子ちゃんは慌てん坊だね。そんなに焦らないでよ」
笑ってコカ・コーラゼロを飲むリュウ。
するとリュウは「やっぱりミルクにすればよかった」と一言呟いた。
ミルクにしていたって結局「コカ・コーラにすればよかった」って言うに決まってる。
オレンジジュースを口に含み、喉を潤す。
そして私はリュウが食べ終わるのをじっと待っていた。
きっと食べ終わったら話してくれるはず。
オニオンリングを右手に、ハンバーガーを左手に。
私が慌てん坊ならあなたは食いしん坊よ。
「…妃菜子ちゃんは玲奈のこと知ってるんだよね?」
「まぁね。中学が一緒だったから…」
「玲奈ってさ、嫌われてたでしょ?」