想うのはあなたひとり―彼岸花―


その異常なくらいの不在着信にぞっとした。
何かあったんだ。
だからあんなにも電話したんだ。
もしかして次の面会の日にちかな?
だったら椿の誕生日がいいな。


私は冷蔵庫にあった牛乳を取り出し、グラスに注いでいく。
羨ましいほど純粋な牛乳はまるで椿の罪の色を表しているようだった。



牛乳を飲みながら保科さんに電話をする。
今は9時前。
まだ出勤前かな?
運転中じゃないといいけど。




…プルプル…




『妃菜子…ちゃん?』




発信音から保科さんの声に切り替わったすぐだった。
私は気を緩めていたのか口から牛乳を溢してしまう。
こういうところもまだ子供だ。




「どうしたんですか?あっ面会の日にちですよね?私、7日がいいんですけど…ダメですか?椿の誕生日だから祝いたくて」





どうして、神様は私に幸せを与えてくれないのでしょうか。





『椿くんには…会えないんだ…』





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