想うのはあなたひとり―彼岸花―


静かな口調でこう言った保科さんの言葉の内容がよく分からなかった。




「あぁ、7日はダメってことですよね?じゃあ近い日にちならいつでも…」




この時には気づいてた。
いつもの保科さんじゃないことくらい。
聞きたくなくてわざと私は元気な素振りをみせていた。




『いや…妃菜子ちゃん…ちゃんと聞いて欲しいんだ…』





「な…なにをですか?」





きっと今から話されることは私にとってよくない話だと思う。だから聞きたくなかった。
耳をちぎりたかった。






『…妃菜子ちゃん、逃げずに聞いて欲しい。もう椿くんには会えないんだ』




「え…なっなんで…」





世界が真っ暗になる。
見えていた光が闇に変わる。






『椿くんが…自殺をした』







嘘…でしょ。
そんなわけがない。
そんなはずがあるわけない。




だって…だって。
椿はあんなにも強く生きていたのに。




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