想うのはあなたひとり―彼岸花―



こいつ、中身は腐っている。



外見は良くても口から零れ落ちる言葉は最低だった。
一瞬でも皐に見入ってしまった私が馬鹿だったわ。


生きているだけで十分?
私が死んでも良かったっていうこと?


じゃあ私が死ぬときはあなたの前で死んであげるわよ。




「じゃあ、いつかあんたの前で死んであげるわ。私にとって生きることはすごい辛いことなんだから」




椿と約束したから。
強く生きろって。

もう一度会うことを願い、
もう一度愛することを祈っているの。



「…ふーん。俺にそんなこと言うんだ。花本妃菜子さん?」




「…え?」




「ん?皐、妃菜子ちゃんのこと知ってんの?」




不敵な笑みを浮かべる皐。
そんな彼の表情を見た私は背筋が凍る感覚に陥った。





何で…私の名前を?





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