反射
「ああ、反転世界のここの住人なのね。だから入って来れたのか・・・そしてここに来たって事とその顔を見てるとあなたはここに来たばっかりなのね。ていうか、あなた気付いてる? 自分が死んだって事。でもおかしいわ、生きていた時の記憶は無くなっているはず・・・」
その女はマシンガンの様に早口で話す。しかも最後は独り言。
女はめんどくさそうにバサバサと頭を掻くとベッドに潜り込んだ。
「聞きたい事もたくさんだろうけど、今日は寝かせてちょうだい。あなたもここで寝て良いから。襲ったら本気で殺すわよ」
その点は大丈夫だ。僕はコイツからは何の色気も感じない。僕は黒髪ショートヘアで小さくちょっとぽっちゃりしたかわいい系女性が好きなのだ。
彼女は茶髪のロングヘア、背がスラリと高く痩せ過ぎでガリガリだ。身体のバランスは良いが、僕はこんな女には何も感じない。
灰色のスウェットから細い身体に見合った細い右腕と肩が枯れ枝のように動き、電気のスイッチを引く。暗闇が部屋を支配する。
暗闇から声がする。
「悪いけどなんも無いから床で寝てね。お休み」
こんな冷たい女も嫌いだ。部屋に泊めてもらえるのは有り難いが。