蝉時雨
たわいもない言葉のやりとりをしていると、真夏さんが真剣な表情を見せた。


「ねぇ…透。もう一度会えたら貴方に聞きたい事があったの。聞いても良いかしら?」


そう透さんに言って、真夏さんは私を見た。


「さっきから、君らしくないよ。その言葉遣い‥‥って、えぇっ?何言ってるんですか、透さんっ!!」


透さんはケラケラ笑ってる。今まで見たどの笑い顔でもない。きっと、真夏さんにしか見せない顔なんだろう。


「じゃあ〜…聞きたいことあるから、ちゃんと答えろよっ!?」

「…やっと君らしくなったね。って、笑ってます。」

「ね、私を好きになって…」


真夏さんは、そこまで言葉を吐き出して口を噤んでしまった。

私はそんな真夏さんに透さんからの言葉を伝えた。


「後悔なんてしてないし、僕はとても幸せだよ。君が笑ってくれさえすれば、僕は世界で一番幸せになれるんだから。」


本当は透さんの声で聞かせてあげたい。


「私も、あんたさえ笑ってくれたら世界で一番幸せになれるんだっ!!」


それでも真夏さんは私の伝えた言葉に、潤んだ瞳で笑っていた。

その時、遠くから駆けてくる小刻みな足音が聞こえた。


「ママー!!」
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