題 未 定


どうして彼は彼女と出会ってしまったのだろう。
彼女と恋に落ちてしまったのだろう。
罪悪感に追われながらも
彼女といたいという
自分を追い込むような道を
自ら選んだ彼を私は
理解できない。


過去を捨てる事も出来ず
未来を見据えることも出来ず
ただその今を生きるしか
出来なかった彼には
やはり彼女という存在が
必要だったのだろうか。


しかし彼は今さっき
その今をも失ってしまった。
どうするのだろう。
もう彼には逃げ場はない。

「春菜ちゃん??大丈夫??」
彩の心配そうな声で
我にかえった。


「あ、うん平気。ごめんそろそろ帰ろうかな。」




開けた時よりも
いくらか荒く閉めたドアは
病室の中の花の香りを
ピシャリと遮断した。



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