【短】隣のお兄ちゃんと私
それは、いつものように家庭教師に来てくれたお兄ちゃんに苦手な英語を教えてもらっていたとき。


「なんで文のどこにあるかで“that”の意味が変わるのよ〜っ!」


なんてキーキー言う私をにこにこ見つめるお兄ちゃんに基礎から教えてもらいつつ、少しずつ問題を解いていた私の携帯が鳴ったのは、そろそろ家庭教師の時間が終わろうかというときだった。



ーブブブッ



マナーモードにしている私の携帯がいつまでも鳴り続けるのが気になって、とりあえず誰からかを確認しようかと手に取ろうとしたら…


さっと隣にいたお兄ちゃんが携帯を取ってしまった。


「あっ…もうっ!」



と携帯を取り返そうとした私の前で、携帯のディスプレイを覗いたお兄ちゃんの眉が、軽くしかめられた。


「石田拓海…?」

「あ、きっと学祭のことだっ!」



クラスメイトからの電話で、しかも学祭のことだと思った私はなんにも考えずに携帯をお兄ちゃんの手からぱっと奪った。
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