昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

多分脳みそ半分、どっか飛んでもとったんやと思う。



「─────」



耳をつんざくような、車のクラクションの音。


真っ白になった頭に、鋭いブレーキ音が銃声みたいに刺さって。



…一瞬、体が宙を舞うような感覚に襲われた。



体がひっくり返る。


すごい勢いで世界が回る。



「あっぶな…っ、」

「─────、」

「〜っに考えとんねんアホっ!!信号赤やで!?」



自分でもビックリして、言葉が出んかった。

車道の白いガードレールにもたれ掛かるようにしてウチを抱え込む風間。


どうやら赤やのにそのまま渡ろうとしとったらしい。

怒鳴りつけられて初めて、ハッキリした意識が戻ってきて。


摩擦で擦り切れた足が、熱くてヒリヒリと痛む。


「もうちょっとで引かれるとこやった──、」

「った……」


あれ。

あれ?おかしい。ビックリしすぎたせいなんかな、なんか、涙出てった。

足がジンジンする。やのに痛いのは、もっと痛いのは、首筋。


…かっちゃんに噛みつかれた、首筋で。


「いった……」

「…優子」

「痛い…、」

「…………」

「いたい………っ、」



なんか。



痛いのと安心したのと苦しいの驚いたのと。もう全部混じって、いっぱいになって、はじけた。



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