昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
うつ向いて唇を噛み締めたら、風間の顔が近づいてきて。

ふわりと、頬に何かが触れた。

何かが。


なに、て。


「………っ!?今…!!」


ほっぺた押さえておもいっきり仰け反る。

え…今もしかしてチューされた?

信じられへんこんな真っ昼間にしかも大学で!!


「しん…っじられへん…!!」

「しゃーないやん。今日優子俺のこと避けるからけっこーさみしかってんで?」


近い距離で、見上げるようにそんなこと言われる。

いやいやいやいやいやちょっと待って反則やろ何なん女のうちより可愛いでな……!!


ロクに目も合わせんかったから、うちの目は今日風間を初めてはっきりと認識する。

昨晩のことを思い出して、体温がぐわーて上がるんを感じた。

ただでさえ暑いのに、ゆで上がりそうや…。


「…しゃーないよ」


風間はそう言って、一度視線を地面に落とした。


「い…いや、しゃーないって…」


確かに避けまくっとったうちが悪いけど、でも大学でチューとか外人ですか〜ゆう話やんか。

日本人はそんなオープンやないねん。慎ましやかに白米食うとったらええねん!!


「気持ち、て」


風間の声に、膨らんでた頭の中のこれぞ日本人妄想が止まる。

風間の声は、なんか切ない声やった。


「気持ちて、そんな簡単に動くモンやないやん。」

「………」

「やから、しゃーないよ。」


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