ヤクザと執事と私 【1の残り】
真木ヒナタが銃撃されて3日が経った。
あの後、教えてもらったことによると、真木ヒナタは、離れたビルの屋上から狙撃されたということだった。
運良く急所は避けていたので、長時間の手術を経て、一命は取り留めたけど、真木ヒナタはいまだに目を覚まさない。
医者のいうところによると、出血量が多すぎて、脳に障害が残るかもしれないという事だった。
「小夜さん!」
私は、後ろから声がしたので、振り返ると執事が立っていた・・・振り返らなくても声でわかっていたけど。
執事は、大量の紅い薔薇の花束を片手に抱えていた。
もう片手には、お見舞い用の果物も持っている。
その立ち姿は、なんていうか・・・絶品。
これほど紅い薔薇が似合う男性はいないと断言できるくらい。
思わずこぼれそうになる笑みを必死に抑える。
「・・・龍一さん、おはようございます。」
どうにか平静を装って挨拶をする。
「おはようございます、小夜さん。花瓶の水の入れ替えですか?」
「はい。」
「ちょうどよかった。それでは、花をこれに替えましょう。」
執事は、私に言い、私も「はい。」と答えると、そのまま行くはずだった洗面場に向おうと振り返って歩き始めようとした。
が、私の想像とは違い、目の前には無かったはずの柔らかい壁が存在していた。
壁にぶつかり、その反動で後ろに倒れそうになる私。