ヤクザと執事と私 【1の残り】

「何ですか、これ?」


私が不思議そうな顔で熊さんを見上げる。


「・・・食べる。」


熊さんはニコニコしたまま。


「小夜さん、それは、熊さんが病院で真木ヒナタさんのお世話をしている小夜さんのために作った特製のお弁当ですよ。」


後ろから言葉すくなの熊さんに代わって執事が答える。


「・・・ありがとう、熊さん。」


私は、熊さんの心遣いがうれしくて、心底笑顔で熊さんに微笑みかけた。


「・・・じゃ・・・ここで・・・食べる?」


熊さんの言葉に思わず動きが止まる私と執事。


病院の廊下の真ん中でのこと。


「く、熊さん・・・さすがにここでは病院の方にご迷惑ですから、真木ヒナタさんの病室にいって食べましょう。」


再び苦笑いの執事が答えた。


「・・・わかった。」


熊さんは、執事の言葉の後に素直に真木ヒナタの病室へと向かって勝手に歩いていった。


その後ろ姿を呆然と見送った後で、私と執事は、花瓶の水と花を入れ替えに行った。


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