ヤクザと執事と私 【1の残り】
「いきなり、知らない男達に連れ去られ、船に乗せられ、知らない土地へ。そこで・・・人とは思えない扱い。少女は何度の死のうと思いました。でも、きっと家族が助けに来てくれるはずだと希望を捨てずに必死に生き抜きました。・・・でも、誰も来てくれません。」
私は、ママに聞いた真木ヒナタの話を思い出す。
「・・・そして、少女は、いつの間にか、希望を捨て、自分の力で生き抜く決意をしました。そして、多くの人の命を喰らいながら、少女は生きてきました。組織の新たな死神として。」
「どこの組織ですか?」
執事が少女の話に口を挟むが、少女は気にせず話をつづける。
「そして最後の仕事と決め、受けた仕事で来た東の果ての島。狙いを定めたスコープの先に懐かし顔を発見しました。ターゲットの横にいる男は、懐かしき家族。・・・思わず、指に力が入り、・・・狙うべきターゲットではなく、愛すべき家族の胸に弾丸が飛び込み・・・。」
「あなた、・・・まさか。」
執事と組長の表情が蒼白に変わる。
「・・・狙いは、執事。組織に多大なる損害を与えた男。・・・でも、失敗しちゃった。執事暗殺の命令は取り消され、今度は失敗者の始末に変更。だから、私はもう終わり。・・・・せめて、最後は、家族の元で。・・・ね。」
少女は笑う。
そして、それは何の前触れもなしに起こった。
私の頭に押しつけてあった少女の拳銃が、少女自身の頭に向けられ、乾いた発砲音が病室に響く。
私が振り返ろうとすると、執事が、私の肩を掴み優しく執事の胸へと抱き寄せる。
「・・・小夜さん。・・・小夜さんは見てはいけません。小夜さんには経験する必要のないものです。」
執事の声が私の耳に心地より振動を与える。
しかし、その振動でも、私の心に落ち着きを与えることはなかった。
私は、見なかったけど、何が私の背中で起こったのかは・・・わかっていたから。