やさしい声【短編】
「………あ……」と口を開いたきり何も言葉が出てこない
それでも拓真は私の言葉を辛抱強く待っていた
何も言えなくて目を伏せた私の頬を拓真は優しく撫でて
「ただの勘だけど
真琴が結婚を躊躇する理由は
その『怖い』に
関係してる気がするんだ」
言い当てられて私は観念した
親友だって元カレにだって話したことはない
あの時の出来事を
私は
うまく拓真に伝えられるかな――――――――――――――――――