やさしい声【短編】
「母はいつも私を見る時
申し訳なさそうな目をする
それは
私の心が狭いからいけないの
拓真、私ね自信がない
結婚して家族が増えれば
幸せだけじゃなく
困難だって増えて行く
あの時に母を許せなかった自分が
ちゃんと家庭を築いて行けるか
どうしても自信がない
だから、拓真」
拓真、私は結婚できない
私と別れて他の誰かを探してって言おうとしたら
拓真は そっと
人差し指を私の唇に乗せた
「ねぇ、真琴
許してあげてくれないかな?」
「え?」
「オレの真琴をだよ
まだ小4。子供だったんだ
傷ついて当然だったんだよ
お姉さんがいなくなった事も
家に明かりが消えた事も
お母さんが
疲れて言ってしまった事にも
小さな真琴が
傷ついて当然だったんだ
だから、真琴。
もう許してあげて?
オレの愛している真琴を
真琴が許してやってほしい」
ねっ?って
拓真が私を抱きしめて
私の中で何か
固い殻みたいのが割れていく
その瞬間、目からポロポロ ポロポロ 涙がこぼれて
拓真の胸を濡らしていった