蒼い太陽
「…あの月水晶はこの時のために月族の長から譲り受けた物。
この時のために魔力を温存させておいたまでだ。だから、それまで魔力を使わないように言っていた…」


レガートが苦しそうに補足した。


「レガート様…あなたは何を知っているのですか、一体、何が起ころうとしているのですか?」


アヤトが尋ねた。


泉の間で族宝が言っていたこと…変革…、レガートは何かを知っている、アヤトは確信した。

「…私が知っている事はほんの一部にしか過ぎない。多くの情報が混乱を招く事もある。

そして、知っている事が本当に起こり得るとも限らない。

これから何が起こるのかは…お前達次第だ。」


レガートはアヤト、ユウ、ダリアに目を配らせると次にフィリシア達へと視線を向けた。


もうレガートは何も教える気はないのだろう。


そうアヤトにはわかった。


フィリシア達の間には未だに一歩も譲らない戦いが続いている。


ミシャは本当にフィリシアを殺そうとしているのだろうか…フィリシアを殺す、と言われつい冷静さを欠いてしまったが、よく考えるとあの時のミシャからは殺気が感じられなかった。


そしてそれは今も同じなのだ。






「――――っ!!」


ザンッという鋭い音と共に、ミシャの剣先がフィリシアの右腕を斬りつけた。


腕からは真っ赤な血が滴り落ちている。


痛みに顔をしかめながら左手で傷を抑えるが、血は止まることなく流れ続けている。


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