フラミンゴの壁
時空は次第に日常の景色に変わりつつあった。
一瞬、燃え盛る炎に建物が瓦解し、人々が絶望に身を凍えさせている風景が写った。
「あれが明日の出来事よ。」運転手が言った。

「お前たちが俺を追ってきたのはあれが理由か?手紙に書いてあったことだな。なぜ俺が書いた手紙にお前たちが怯える明日のことが記されていた?それを教えろ!」

すかさずヘルメスが、「馬鹿だなぁ、お前。これも仕組まれていたんだよ。仮定してみろよ、俺たちが昨日からお前を追い掛けたと思うか?俺たちがお前の子供のときに会っていてもおかしくないだろ。お前は俺が話したことに夢中で聞いていたよ。そのあとこのダナエと一緒に手紙を約束として書いただろ。覚えてないのはいまのお前がいたこの時空だけ。俺のきっかけで時空をいまのタイミングで交差させただけさ。」

目の前は次第に元の世界に戻っているようだった。
さっき目に入った街を囲んだ炎も消えていく。

これをタイムワープでも言うのだろうか、気が付いたときにはタクシーを捕まえた場所と同じ場所に立っていた。

違うのは運転手とヘルメスが揃って前に立っていたことだ。

「このダナエという男女が美しい男か。手紙に書かれていた通りだな。そして、ヘルメスが魔導士というわけか。色男とインチキマジシャンってことだな。」

俺は鼻でふたりを笑った。

辺りは何も変わっていない。
何にも起こりそうもない静かな夜だったからだ。
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