フラミンゴの壁
次の瞬間に突然、ヘルメスのカラダが闇に食われていく。
そして食われまいと抵抗するように閃光が光にむかって勢いよく飛び散っている。

「お前、きっかけを使ったな!何をした?」ヘルメスが大声で叫ぶ。

俺はさっき、ダナエとアテネの挙動を不振がり、ヘルメスが妙なことを起こさないようにきっかけをかけていたのだ。事実、ヘルメスが俺にきっかけを仕掛けようとしたらしい。
ヘルメスは闇に食われながら喪がくわけもなくただヘルメスに与えられたきっかけの発動を繰り返し、くりかえし俺にむかって仕掛けていた。

「お前は、世界を救えない。お前の力はひとをひとりも救えない。見ろ、お前の力で俺は消える。お前は郵便配達の男と、この俺、ふたりも殺したわけだ。おまえのちからは所詮、この程度の浅い力さ。俺たちは大きな勘違いだったよ。ダナエ、そしてアテネ。この場から離れろ。この世界を捨て、もうひとつのちからに帰れ。お前たちが無理をすることはない。この世界はこの男だけの世界になるんだ。こいつもそのつもりだよ。」

ダナエが俺に向かってすぐに止めるように泣きじゃくりながら、俺の胸元を掴んで振り回した。
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