狐と兎
「…………ん」
「ハルト!?」


ハルトはゆっくりと目を開けました。

彼の目に真っ先と映し出されたのは、今にも泣き出しそうな表情のキルシュの顔でした。

それに驚く事もせずにハルトは何が起こっているのかを整理しました。


「……あ、そうだ。急に気分が悪くなったんだ」


ベッドに横になったまま、慌てる様子もなく冷静にそう言いました。

キルシュはそれを見て、騒いではいけないというのに大きな声で怒鳴りました。


「バカっ! 心配させないでよ! 熱があるなら無理しなくて良いのに……」


恐らくはその声はオルヒデにも届いていたでしょう。

しかし彼は忙しいからなのか姿を見せる事はありませんでした。
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