狐と兎
「やめろ、やめてくれ……! やるならワシを……」


必死にハルトに手を出すことだけはやめてほしいと、懇願するカトラ。

それでは意味がないと言わんばかりに龍達は一斉に雄たけびをあげました。

龍はハルトに何かの呪文を吹きかけました。

それを阻止しようとカトラは持っていた剣を龍に投げましたが、遅く。

ハルトの両腕には謎の黒い痣がありました。それはまるで種のようでした。


『その腕の花が咲いたら、この嬰児は死ぬ。我らの家族を殺した罰だ。
お前も我らと同じようにジワジワと苦しむが良い。呪いは決して解けぬ』


カトラは初めて龍の声を聞きました。そして知りました。

この龍達は以前に自分が殺した龍の家族であり、これは自分に対する復讐なのだと。

カトラが言葉をあげようとした瞬間に龍達は姿を消しました。


「すまぬ……本当にすまぬ……」


未だに泣き続けるハルトを抱きあげ、カトラはポツリとそういう事しか出来ませんでした。

< 67 / 96 >

この作品をシェア

pagetop