狐と兎
一方で先程よりかは幾分か落ち着きを取り戻したキルシュは、

頭の片隅にある知識を手繰り寄せながらも、森の中を颯爽と走りある場所へと向かっていました。


（あんな事言ったけれど、ハルトは本当に心がないように見えるけれど、やっぱりあたしは……）


カトラが倒したという龍の住処を目指し曖昧な記憶だけを頼りに、お面を被ったキルシュは駆け抜けます。

途中数々の魔物が彼女目掛けて襲いかかって来ましたが、

元々の怪力と素早さが功を奏したのかキルシュの力程度ならば簡単に倒せました。


「あたしに襲いかかるとか、バカじゃないの!?　今はそれどころじゃないって言うのに!」


倒しても倒しても襲いかかってくる魔物達に、キルシュは苛立ちを覚えました。

今のキルシュには一点の方向しか目には映っていないようでした。


（待っていて。もうすぐだから……）


気付けば辺りは真っ暗になり、明かりもない森は危険さを更に増していました。
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