狐と兎
「待っていてね、今手当てしてあげるから」


そう言ってキルシュは近くに雑草と同じように生えていた薬草を摘み取り、

草をぎゅっと握りました。そこから出た僅かな雫を龍の赤ちゃんの傷口に当てました。

赤ちゃんは先程よりも大きな悲鳴をあげました。


「大人しくして! すぐに良くなると思うから……」


そう言いながら結っていた髪を解き、その青いリボンを赤ちゃんの傷口に縛りました。


「これでよし……っと!」


1人で手当てが出来たことへの満足感からか、キルシュは満面の笑みを浮かべました。

赤ちゃんも痛みが緩和されたからなのでしょう。キルシュにまるでお礼を言うかのように、

彼女の傍にぴたりと身体をくっつけました。そこでキルシュは、ハっとなりました。


(この子がいるって事は……あたし、来た場所間違っていないってことだよね?)
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