恋するレンズのむこう
何もできないあたしだけど。


何も持ってないあたしだけど。


それでもそんなあたしでも、陸を元気付けたかった。


『大丈夫…』


陸を元気付けるように言ってる半面、自分にも言い聞かせるようにいった言葉。


でも、きっと大丈夫だよね?

梓はこんな風にあたし達の前からいなくなったりしないもんね?


目を閉じると、ふわんと浮かび上がった梓の何もかも包み込んでしまいそうな優しい笑顔。


もしかして最近連絡が来なくなったのは病気で体調が急変したから?


そう思うとちゃんと連絡してれば良かったって後悔してきた。


『あたし、梓と16の時付き合ってたんだ…知ってるだろうけど…』

静かで薄暗い廊下。
静かな所にずっといたら心の中が不安でいっぱいになってしまうから。


あたしは梓との事とかどうでもいいようなくだらない話とかを陸に話した。
陸は黙って聞いていたけどさっきよりは落ち着いてる様子。


『それで、あたし梓が好きになって』


梓は優しくて、本当に大人で頼りになる人だった。


兄弟のいないあたしにとってはそれはお兄さんができたようでうれしかった。
今思えばお兄さん、というだけで恋をしてたわけではなかったのかも。


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