メイド in LOVE


父は、どこの女と分からない
若い女と逃げ出した。


残ったのは
家族で暮らしていた家と
父が作った借金だけ





それでも私は
希望を捨てなかった。


いつでも
母と父が帰ってきても
良いように、この家だけは
守ろうと頑張った。




けれど、借金取りに追われ
仕事も失った。


父の借金を
何故、私に返せと言うのか
分からなかった。



毎日毎日、苦しい生活。

食事も十分に取れない。



そんなある日…

母が所属していた演舞団が
この国にやってくると知った。


もしかしたら
母に会えるかもしれない。


そんな淡い期待を持って
私は、演舞団へ足を運んだ。



私が小さい頃と
同じ様子で変わらない踊り

懐かしさに心が
いっぱいになった。


けれど、母の姿はない。



「…キース団長!」


「おぉ、君はもしや…」


「はい、リザです。
本当にお久しぶりで…」


「久しぶりだな。
ずいぶん成長したみたいだ
お母上によく似ている。」


「ありがとうございます…
今回は母のことで
話を聞きにやってきたのです」


「君の母上のこと、かい?」


「はい、母は今どうしているか
分かりますか?」


キース団長は
とても驚いた顔をした。


「手紙…ずいぶん前に
私からの手紙を
受け取らなかったかい?」


「…いえ、私は受け取ってません」


「そうか…治安が悪いからな
ここまで無事に手紙が
届かなかったんだろう。」


「…………?…」


「いいかい、リザ。
…よく聞きなさい。




君の母上は
もぅ、死んでるんだ。」


希望が目の前で
崩れていった。


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