Anniversary





「つまり、この“お月見計画”の真のコンセプトは、“楽しめりゃいい!”ってコトなワケねっ!?」

 件の先輩3人衆を屋上のスミッコまで追いやってから、そうして鼻息も荒くそれを言った私に……みっきー先輩が、「ご名答」と、ニッコリ笑顔で応えてくれた。

「せっかくの“中秋の名月”やからな。“名月”に相応しく、供え物もゴージャスに! ってな。――日本人たる者、こういう機会に乗じて楽しむのが“風流”ってモンやで?」

 そこで「“風流”なら“風流”で、もー別にいいんだけどさー…」なんて、吉原先輩がタメ息吐きつつ苦笑する。

「でも、学校側は“風流”が理由じゃー、屋上の使用は許可しちゃくれないワケだよ。それで“天文学的な観点云々”と尤もらしいリクツをこねくりまわして、よーやっと今夜の使用許可を貰ったワケだ」

「つまり、早い話が、“風流なイベントに乗っかって騒げりゃOK!”ってコトやな」

「―――“風流”とやらの方向がズレている気がするんですけど……」

 チラリと半眼を向けてボソッと呟いた早乙女くんの言葉に、うんうんと深く頷いて、私は心の底から同意した。

 どこの世界に《月に感謝を捧げ隊》なんてものを結成する“風流”なんてものがあるというのか。

 …それを“風流”と、あくまでも言い張るのならば、私は日本人の美意識を疑うわよそもそも。


「それで…? これでもう、“供え物”は出揃ったんですか……?」


 そんな思い出したような早乙女くんの言葉で……ふいに目の前で先輩2人が、「あれ?」という顔で絶句した。

 そして顔を見合わせる。

「――そういえば……」

「カンジンなモノが、足りないんちゃう……?」

 机の上には……薄に、月見団子に、柿、葡萄、梨、秋刀魚、イガ付き栗、そして屋上に増えた部員と共に、大福に枝豆、メロンまで加わって、ものすごいニギヤカなことになっている。

 ――これ以上、何が足りないというの。

「『カンジン』って…何が無いの……?」

 反射的に問い掛けた私を揃って振り向き、先輩たちは声を揃えて、それを告げる。

「「芋」」

「は……?」
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